これまで当団で北欧の作曲家トイヴォ・クーラの曲は何曲か取り上げてきたが、「Auringon noustessa」は初めての演奏となる。大変スケールの大きな曲。
■ 大竹 くみ
桐朋学園大学作曲理論学科卒業。同研究科修了。第58回日本音楽コンクール作曲部門第1位。作曲を故三善晃氏に師事。
これまでに、TVのニュース音楽、NHK杯フィギュアスケート世界大会の式典音楽、
シンクロナイズドスイミングの競技用音楽、劇中音楽等多くを手掛けている。
ピアノをはじめ電子オルガン、パイプオルガン奏者としての活動も幅広く、近年はYEC課題曲の委嘱作品制作、審査、
洗足学園現代音楽コンクールの審査、森麻季のCD「Ave Maria」のorgan版編曲及び演奏、NHK東京児童合唱団『日本歌50選』の編曲等行っている。
NHK連続テレビ小説「ひよっこ」向島電機乙女寮コーラス部の歌う合唱曲は話題となり楽譜が配信中、
また、CD「ねがい 大竹くみ作品集」(OVCL-646)が発売中である。現在洗足学園音楽大学講師。
■大竹くみ プログラムノート (出版楽譜より転載)
いかなる編成であっても演奏されることが約束されていると、書きたい気持ちが自然に湧いてきます。
というより、その気持ちを隆起させ持続させることも書く仕事の大切な要素であると自覚しています。
そこに、「アカペラで混声書かない?」なんて声を掛けられましたから、もちろん飛びつきました。
そして、演奏していただく合唱団の指揮者から「ラテン語のアカペラ作品」とのご要望でしたので、常々気になっていたアンティフォナを選んだのです。
初演のプログラムノートに「ずっとずっとラテン語に憧れていました」とあります。
今もそうなので、どこに憧れ、「魅力を感じるか探ってみました。
私にとってラテン語に音をのせハーモニーとし、作品にすることは高次元に近づいていくような感覚であることに気が付きました。
そして、多少の訳語は知っているものの母語ではないこの言語は、
自分自身の日本語に至るまでに想像力をフル回転させて感じ取るプロセスを必要とするため、最終的な意味に幅が出てくるのです。
結局、おぼろげな感じがするので自動的に次元を引き上げてしまうのか?
または、ラテン語が数多くの言語の母胎となっていることが理由かもしれません。
言葉を発してから意味に到達するまでの時間差は、音楽的な高揚と気持ちの冷静さを同時進行させる環境を生み出せる様な気さえします。
これらを簡潔にすると、「ちょっと特別な感じがする!」です。
divisiなしで絶対に四声以内で書こう!と心に決めて書き始めました。
肌のすぐそばにある空気の層、その流れ、温度、風が運んでくる匂い、目に映る色などが留まることなく変化していくさまを混声のアカペラに織り込みました。
初演でお世話になりました故島田和昭さん、群馬室内合唱団の皆さま、作曲のチャンスの源であります池田規久雄さん、本当に心より感謝しております。
ありがとうございます。
2016年6月 大竹 くみ
(「無伴奏混声合唱のための聖母マリアのアンティフォナ/アヴエ・マリア」全音楽譜出版社,2016より)
- Alma Redemptoris mater(やさしき贖い主の御母)
- Ave Regina caelorum(めでたし、天の女王)
- Regina caeli(天の女王)
- Salve Regina(めでたし女王)