20世紀初頭から現在までの、著名なあるいは現在活躍中の欧米作曲家による宗教作品を紹介する。
Ave Mariaは、古来ラテン語による多数の名曲があるが、本日は現在アメリカで活躍中のアクィランティがイタリア語で書いた作品を歌う。飼葉桶に横たわるイエスと母マリアへの祝福を神秘的に表現したプーランクのO Magunum mysterium、人々の犠牲となって苦難を受け入れたイエスへの讃美を詠うサン=サーンスのAve verumの
2曲は、いずれも和音の変化が美しい。
続くAve Maris Stella(めでたし、海の星)は、巨匠コダーイの薫陶を受けたハンガリーの作曲家バルドシュの作品。聖母マリアを明けの明星に見立てて讃美した曲で、各声部の受け渡しによる音色変化が面白い。
最終曲Ubi Caritasは、今人気の高いノルウェー人作曲家イェイロの作品で、「慈しみと愛のあるところに神はおられる」と神を讃美する詩を、現代感覚の和音で斬新に表現している。
最初に演奏される「私は歌に思い出をたどる」は、作曲家信長貴富が2006年に書いた女声合唱組曲「メロディーは誰の胸の中にもある」の1曲目に収められている。サトウ・ハチロー(1903~1973)の使途あいまって、昔懐かしい風景が繰り広げられる。
続いて歌われるのは、1910~20年代にかけて作られた日本抒情歌曲から4曲。いずれも作曲家林光による編曲である。
この作品は、もともとソロヴォーカル用として存在していたが、女声コーラス枇杷の実の委嘱により、「女声合唱とピアノのための10のPOP SONGS」というサブタイトルがつけられ、2006年に女声版が誕生した。本日はその中から5曲が演奏される。
作曲者尾形敏幸は、この曲について「桑名小弓さんの膨大な量の口語自由詩の中から抽出されたこれらは、私の体内に潜んでいる様々なスタイルのポップス思考に適う。」と述べている。
最初の3曲は、20世紀前半に活躍した3人のスウェーデン人作曲家の作品。
夕暮れの中、並木道に映る菩提樹の影と涼しい風を歌ったStemning(旋律)、さあ行こう、愛しい人とブルーベリーの待つ僕らの森へ!と歌うUti var hage(僕らの森へ)、祖国スウェーデンを讃える曲で第2の国歌と称されるSverige(スウェーデン)は、いずれも哀愁を帯びたメロディーとハーモニーが美しい。
続く3曲は1918年に34歳の若さで戦死したフィンランドの作曲家クーラの作品。
夜の帳の中に主イエスを見て感謝の祈りを捧げる曲Kun maan ja mantereen(大地を、大陸を覆うとき)、馬も吹き出す大きなおちょぼ口(?)の恋人を面白く描いたMinun kultani kaunis on(私の恋人は美しい)、そして祖国伝説の黄泉の国トゥオネラで安らかに眠れ、と夭折した我が娘に捧げる鎮魂曲Tuuti lasta tuonelahan(わが子をトゥオネラへ)と多様な作品が残されている。
最終曲Finlandiaは、クーラの師でもあるシベリウスの名曲。