ルツェルン旅行記 -その1 旅行の前-
 私の記憶が確かならば海外演奏旅行の話をはじめて聞いたのは平成9年クリスマスコンサートの打ち上げの席のこと。私の入団はその2ヶ月前、団結成は1年程前のことなのでもっと前から「いつか海外へ!」という野望はあったのかもしれません。当初「いきたーい」といってみたものの、内心「大きな夢を持つのはいいことだ」とほとんど本気ではありませんでした。
 しかし翌年から旅行積み立てをはじめ、遠征先や渡航の時期のアンケートを取ったりと、着々とその夢が現実味を帯び、遠征先はイタリアか、ドイツか、オーストリアかといったところが候補に挙がっていました。
 団員の知り合いの紹介で縁あってスイスのルツェルンで歌わせていただけることが決まったのは平成13年の初めのころだったでしょうか。ルツェルンとは耳慣れない地名でしたが、毎年8月から9月にかけて世界的に有名な国際音楽祭が開かれるところだということをこのとき初めて知りました。なんと幸運なことか我々が行くのも8月後半、町じゅうが音楽祭で盛り上がっている最中です。行く前から期待ではちきれそうでした。
もちろん私たちは合唱を演奏するために行くので、直前まで島田先生のご指導のもとできる限り完成度の高い合唱を目指し練習を重ねました。諸般の事情で今回行けない団員も含めそれぞれの役割分担をして合宿やスイスの下調べなど協力しながら渡欧に備えました。
ルツェルン旅行記 -その2 第1日目-
 10時間以上の往路の飛行機の中、練習している人やおしゃべりに花が咲いてほとんどねむらなかった人など様々でしたが、やっぱりみんな興奮気味で、チューリヒ空港に到着、列車での移動中も見るものすべてに歓声を上げていました。
 ルツェルン駅で今回私たちを受け入れるのに力を貸してくださったルツェルン音楽大学の教授アロイス・コッホ先生が迎えてくださいました。それまでメールのやり取りだけだった先生とお会いして改めて「本当にここで歌わせてもらえるんだ」と実感できたのです。(この期に及んでまだ現実感の薄かった私でした。)
ルツェルンでの宿は中心地よりバスで30分ほどの郊外にあるHotel Landhausでここには4泊しましたが、朝食のクロワッサンやハムやチーズのおいしかったこと!!思い出すといまだに唾でてきます。豪華ではありませんでしたが、居心地の良い長期滞在型のホテルでした。

チューリヒ空港の中央駅(この列車に乗った)
ルツェルン旅行記 -その3 第2日目-
 2日目は土曜日でホテル周辺などに朝市が立っていました。私などは相手の言いなりで買い物をしてしまいましたが、値切って値切って置物やスチームアイロンを手に入れている仲間もおり、「しまった,ちょっとは値切っておくんだった」と思いましたが、後の祭り…。


午後、ホテルの食堂で声出しをしてから市内ルツェルン音楽大学の練習室へ移動しての練習です。西向きの窓を開けるとすぐ下は人通りの多い往来という街中にある建物でした。スイスといえども日中は暑く、戸や窓を開け放っても汗だくになりながら仕上げ練習です。後は本番前のリハーサルを残すのみ。
 夕方練習が終わってからの自由時間、緯度の高いスイスはとても日が長くて8時半くらいまで明るくて市内を歩きまわりました。明日歌わせていただくイエズイテン教会の夕方ミサをみて本番どんな風にミサが進行するのか、参考になりました。教会ミサの中でミサ曲を歌うのでスイスに渡る前に牧師先生や教会オルガニストの方からお話を伺ったりして団の中でも勉強していましたが、それでもドイツ語で行われるミサの中でミサ曲を歌うことへの不安みたいなものがありました。それが事前に演奏する教会のミサを見られたことで随分気が楽になりました。
ルツェルン旅行記 -その3 第3日目-
 演奏旅行の本題であるミサ曲の演奏はイエズイテン教会の日曜ミサの中で行いました.ルツェルン市中心を流れるロイス川に面したイエズイテン教会(ガイドブックではイエズス教会と表記)はスイス最古のバロック様式の教会です。本番前の発声では団員みんながため息をつくほど響きが跳ね返ってきました。司祭様たちよりもさらに前方のひな壇の上で演奏することになっており、声を出したすぐ前方、高い天井、座席の一番後方と何段階か響きがたまる感じで、無神経に歌ったら耳障りな響きになりかねませんが、力を抜いて歌えたら美しい響きになる、そんな残響でした。

 コッホ先生のパイプオルガンで厳粛な雰囲気のミサは始まり、私たちはその進行に合わせウィリアム・バードの4声のミサ、Ave verm corpus、パレストリーナのHeu mihi Domineを演奏しました。私は普段の演奏会と違った緊張感があり、リラックスして歌うことを楽しめたらもっと良かったのにと後から思ったのですが、演奏を終えて「カンマーコールグンマ!」と紹介されたときミサの参列者から拍手をいただいてやはり感動しました。(演奏については他の団員の感想も聞いてみたいところです。)